広告費を月10万円から30万円に増やしたのに、問い合わせは1.5倍にしかならなかった。そんな経験はありませんか。
こういうとき、まず疑うのはキーワードの選び方や入札単価だと思います。もちろん、そこも大事です。
ただ実務で効き目が大きいのは、たいていクリックされたあとの話のほうです。
広告が担当してくれるのは、サイトの入り口まで人を連れてくるところまで。その先で説得するのは、着地したページとサイト内の導線の仕事です。
そこが穴だらけのまま予算だけ増やすのは、底の抜けたバケツに水を足すようなもの。まずは漏れを塞ぎましょう。
この記事では、ROIがどこで決まるのかという分解から始めて、広告経由の離脱を特定する手順、落ちている場所ごとの打ち手までを、数字の例をつけて見ていきます。
広告のROIは、どこで決まるのか
ROIは投資利益率のことで、使ったお金に対してどれだけ利益が返ってきたかを表します。広告の現場では、広告費に対する売上の比率であるROASもよく使われますね。
言葉の定義そのものより大事なのは、この数字が掛け算でできているという点です。
広告経由の成果は、クリック数 × 着地後のCVR × 客単価。この3つの積で決まります。
CVRというのは、訪問した人のうち何パーセントが成果に至ったかという割合のことです。
つまりCPC(クリック単価)を下げるのも、CVRを上げるのも、結果に対する効き方は同じ構造をしています。
同じ10パーセントでも、手の届きやすさが違う
具体的な数字で見てみましょう。月20万円の広告費、CPCが100円、LP到達後のCVRが1.0パーセントだとします。
このときクリックは2,000回、成果は20件、CPA(1件あたり獲得単価)は10,000円です。
ここから改善するとして、CPCを10パーセント下げる場合とCVRを50パーセント上げる場合を並べてみます。
| 打ち手 | クリック数 | CV数 | CPA |
|---|---|---|---|
| 現状 | 2,000 | 20.0件 | 10,000円 |
| CPCを90円に | 2,222 | 22.2件 | 9,009円 |
| CVRを1.5%に | 2,000 | 30.0件 | 6,667円 |
| 両方 | 2,222 | 33.3件 | 6,006円 |
CPCを10円下げるのは、競合の入札状況しだいで、こちらの努力だけではどうにもならない部分があります。
一方でCVRを1.0から1.5にするのは、見出しを書き直す、フォームの項目を減らすといった自分の裁量だけで動かせる話です。
しかも効き幅はこちらのほうが大きい。だから、広告の改善は着地後から手を付けるのが合理的なんです。
許容できるCPAを、先に決めておく
もうひとつ、始める前に決めておきたい数字があります。1件いくらまでなら払っていいのかという上限です。
これが決まっていないと、CPA10,000円が高いのか安いのか誰も判断できません。会議のたびに感覚で議論することになりますよね。
決め方は難しくありません。客単価に粗利率を掛けて、1件から手元に残る利益を出します。
客単価20,000円で粗利率60パーセントなら、粗利は12,000円です。
そのうち何割を獲得コストに回すかを決めれば、上限が出ます。半分までと決めるなら、許容CPAは6,000円。
一度きりの購入ではなくリピートや継続契約がある商材なら、初回の粗利ではなくその後の合計で考えるほうが実態に合います。ただし最初は控えめな見積もりにしておくと、あとで苦しくなりません。
まず、広告の数字だけを切り出す
とはいえ、着地後を直す前にやることがあります。広告経由のデータが、他の流入と混ざっていないかの確認です。
Google広告をクリックした人のリファラは、多くの場合 google.com です。自然検索と見分けがつきません。
手がかりになるのは、クリック時に自動で付くパラメータです。Google広告なら gclid、Microsoft広告なら msclkid、Yahoo!広告なら yclid が付きます。
これらが付いていれば広告、なければ自然検索。判定そのものは単純です。
問題は、自動で専用パラメータが付かない媒体です。そこは自分で印を付けます。
自然検索: https://example.com/lp
Google広告: https://example.com/lp?gclid=XXXXXXXXXXXX
Meta広告: https://example.com/lp?utm_source=meta&utm_medium=cpc&utm_campaign=2026-07-summer
utm_medium=cpc のように有料流入だと分かる値を入れておけば、リファラが当てにならない場面でも広告として集計されます。お金を払った流入には必ず自分でも印を付ける、と決めてしまうのが確実です。
混ざったままだと、どれくらい判断が狂うのでしょうか。
広告費20万円でCVが40件なら、CPAは5,000円です。ところが自然検索と同じ箱に入ったままCVが120件と表示されていれば、CPAは1,667円に見えます。
実態のおよそ3分の1。ずいぶん優秀な広告に見えてしまいますよね。
この数字を信じて予算を倍にしても、成果は付いてきません。広告の評価は、広告だけを切り出した数字で行ってください。
流入元をきれいに分ける手順そのものは、流入元の正しい見方|検索・広告・メール・SNSを分けて計測する に詳しくまとめています。
媒体の管理画面とサイト側の数字は、必ずずれる
もうひとつ、最初につまずきやすい点を先に書いておきます。
広告管理画面のCV数と、自社の解析ツールのCV数は一致しません。計測の仕組みも、どのクリックに成果を紐づけるかの考え方も違うからです。
1割から2割ずれるのは珍しいことではありません。ここで原因探しに何日も使うのは、あまり生産的ではないですよね。
どちらか一方を判断の基準に決めて、そちらを継続して見る。これで十分です。
ずれの理由を突き止めることより、前の週からどう動いたかのほうが、意思決定には効きます。
なおStrideは、gclid などの広告パラメータを検知して広告を独立した流入元カテゴリとして自動で分類します。Cookieを使わないので、同意バナーなしで広告経由の行動を追えます。
着地後の落ちどころをファネルで特定する
広告の数字が切り出せたら、次はどこで人が消えているかを見ます。ここで使うのがファネル分析です。
ファネルというのは、訪問から成果までの道のりを段階に分けて、各段階の通過人数を並べたものです。じょうごの形に見えるのでファネルと呼ばれます。
大事なのは、広告経由のファネルを単体で見ず、他の流入と並べること。比較すると、広告特有の問題が浮かび上がります。
| ステップ | 広告経由 | 検索経由 |
|---|---|---|
| LPに到達 | 2,000 | 3,000 |
| 詳細ページ閲覧 | 700(35%) | 1,500(50%) |
| フォーム表示 | 260(13%) | 620(21%) |
| 送信完了 | 20(1.0%) | 60(2.0%) |
この例では、最初の一歩でもう差がついています。広告経由は65パーセントがLPだけ見て帰り、検索経由は50パーセントで済んでいる。
原因はほぼ、広告で期待させた内容と、LPに書いてある内容のずれです。
反対に、最初の通過率は同じなのにフォームだけで落ちているなら、それは広告の問題ではありません。フォーム自体の問題です。
ステップは3つから5つで十分です。細かく刻みすぎると、どの段差が本当に大きいのか分からなくなります。
ファネルの組み立て方は ファネル分析の基本|離脱ポイントの見つけ方と改善の進め方 にまとめてあります。
落ちる場所によって、打ち手はまるで違う
同じ離脱でも、起きている場所で処方箋は変わります。よくある3つの落ちどころを順に見ていきます。
ファーストビューで落ちる
滞在が数秒で、ほとんどの人がスクロールもせずに戻る。この場合、疑うべきは文言の一致です。
広告のコピーを見てクリックした人は、その続きが読めると期待しています。ところが着地したページの見出しが抽象的だと、来る場所を間違えたと感じてしまう。
広告見出し: 初期費用0円ではじめる勤怠管理
改善前のLP見出し: 働き方改革を、次のステージへ
改善後のLP見出し: 初期費用0円。今日から使える勤怠管理
やることは単純で、広告に書いた言葉を、LPの一番上でそのまま繰り返すだけです。地味ですが、効果が出やすい修正の代表格です。
ファーストビューで確認すべき項目は LP改善チェックリスト|ファーストビューで離脱を防ぐ に一覧があります。
途中まで読んで落ちる
見出しは刺さったけれど、詳細ページやフォームまで進まない。この場合は、判断に必要な情報が足りていない可能性が高いです。
価格が見つからない、導入までの流れが分からない、自分の業種で使えるのか読み取れない。
つまずきの正体は、だいたいこのあたりに転がっています。
読者が何につまずいたかは、集計値だけでは見えません。一人の行動を最初から最後まで追うと、途中で価格ページと機能ページを往復しているような迷いが見えてきます。
Strideには、訪問者ひとりの行動をセッションをまたいで時系列で追うN1分析と、操作を動画のように再現するセッションリプレイがあります。リプレイは記録の時点で全テキストを伏せ字にするので、個人情報が入り込みません。
10人分も眺めれば、同じ場所で止まっている人がいることに気づけるはずです。数字を眺めているだけでは、なかなかここまでたどり着けません。
フォームで落ちる
フォームまで来たのに送信されないのは、いちばんもったいない離脱です。広告費を払ってここまで連れてきた人が、あと一歩で消えているわけですから。
原因の大半は、入力の負担が重すぎることです。項目が12個あるなら、必須を6個まで削れないか考えてみてください。
会社名や部署名、興味のある製品カテゴリ。この手の項目は、返信のときに聞いても間に合うことが多いはずです。
エラーの出し方も見直したいところです。送信ボタンを押してから初めてまとめて赤字が出る作りだと、そこで諦める人が確実に出ます。
出さない広告を決めるのも、改善のうち
無駄打ちを減らすというのは、当てにいくことだけを指しません。当たらない場所に出すのをやめるのも、同じくらい効きます。
たとえばデバイス別に見て、スマートフォンのCVRが0.4パーセント、パソコンが1.8パーセントだったとします。
このとき選択肢は2つ。スマホ向けにLPを直すか、スマホへの配信を絞るかです。
どちらが正しいかは、スマホのクリックが全体の何割を占めるかで決まります。
判断のために、最低限これだけは分けて見てください。
- デバイス別のCVR(スマホとパソコンで倍以上違うことは珍しくありません)
- キーワードや広告グループ別のCV数(クリックは多いのにCVが0のものを探します)
- 着地ページ別のCVR(同じ広告でも、着地先が違えば結果は変わります)
クリックは集まるのにCVが1件もない検索語は、除外キーワードに追加します。予算を増やすより先に、この掃除をするだけで実質的なCPAは下がります。
仮説はA/Bテストで確かめる
離脱の原因に見当がついたら、直して終わりにせず、本当に良くなったかを確かめるところまでやりたいところです。
ここでよくある失敗が、見出しもボタンの色もフォームの項目数も、同じ日にまとめて変えてしまうこと。数字が良くなっても、何が効いたのか分かりません。
A/Bテストは、元のページと変更後のページを同じ期間に出し分けて比較する方法です。時期の違いによる影響を受けないのが利点です。
ただし注意点があります。CVRが1.0から1.5に上がったと言い切るには、それなりのアクセス数が必要なのです。
数百セッションでは、たまたまの揺れと区別がつきません。
母数が少ないサイトは、色を少し変えるような細かい検証より、見出しごと差し替えるくらい大きな変更から試すほうが向いています。
進め方の詳細は A/Bテストの始め方|ノーコードで検証する手順と注意点 にまとめました。Strideなら、サイトを開いたまま画面上で文言を書き換えてテストを作れるので、LPの改修待ちで検証が止まることもありません。
数日で結論を出そうとしない
もうひとつ、期間の話をしておきます。開始から2、3日で数字を見て、良し悪しを決めていませんか。
曜日によって訪問者の層は変わります。平日の昼と週末では、そもそも来ている人が違うのです。
だから最低でも1週間、できれば2週間は同じ条件で回したいところです。
検討期間が長い商材では、クリックした日と申し込む日がずれる点にも注意が必要です。今日クリックした人が来週申し込むこともあります。
直近3日のCVRだけを見て広告を止めてしまうと、これから返ってくるはずだった成果まで捨てることになります。判断の窓は、商材の検討期間に合わせて広げてください。
明日から、この順で進める
最後に、手を動かす順番を整理します。遠回りに見えて、この順がいちばん速いです。
- 広告経由が自然検索と分かれて集計されているか確認する。分かれていなければ、まずそこから
- 客単価と粗利率から、許容できるCPAの上限を決める
- 広告経由と他の流入で、ファネルの通過率を並べて比べる
- 差が一番大きい段差を1か所だけ選び、仮説を立てて修正し、検証する
このサイクルを回している限り、広告費を増やす判断はいつでもできます。逆に、着地後が整っていない状態で増額しても、増えるのは支出だけです。
ここまで読んで、うちはまだ2番目もできていないと感じたなら、それは悪いニュースではありません。伸びしろが分かりやすい場所に残っている、ということです。
広告のROIは、クリック単価だけで決まるものではありません。
広告の数字を切り出す、ファネルでどこで落ちているかを特定する、その場所に合った手を打って検証する。
この3つが、無駄打ちを減らすための具体的な作業です。
予算を増やすのは、そのあとでも遅くありません。まずは今月の広告経由の数字が、他の流入としっかり分かれているかを確認するところから始めてみてください。
参考記事
広告側の設定や用語については、媒体の公式ヘルプが最も正確です。