アクセス数は伸びているのに、申し込みの件数はほとんど動かない。心当たりはありませんか。
そういうとき、どこを直せばいいのかを教えてくれるのがファネル分析です。統計の知識はいりません。
この記事では、ファネルの組み立て方、数字の読み方、初心者がつまずきやすい落とし穴、そして改善を回すところまでを順番に説明します。実際に手を動かせるところまで落として書いたので、これから初めて設定する方も安心して読み進めてください。
ファネル分析とは、どこで人が減ったかを見る道具
ファネルは日本語で漏斗(ろうと)のことです。上の口は広く、下にいくほど細くなる、理科室にあったあの器具ですね。
ウェブサイトでも同じことが起きています。トップページに1万人が訪れても、購入まで進むのは数十人ということが珍しくありません。
ファネル分析は、この減り方を段階ごとに数えて並べるだけの手法です。訪問した人が何人、商品ページまで来た人が何人、カートに入れた人が何人、と並べていきます。
やっていることは足し算と割り算だけ。それでも、あるのと無いのとでは改善のスピードがまるで変わります。
全体のCVRだけでは、次の一手が決まらない
多くのサイトが見ているのは、訪問数と、コンバージョン数(申し込みや購入といった成果の件数)と、その比率であるCVRの三つです。
CVRが1.2%から0.9%に下がった。数字としては、それで分かります。
ただ、明日から何を直せばいいのかは、この三つを眺めていても出てきません。下がったという事実だけが手元に残ります。
ファネルがあると、この0.3ポイントの低下がどの段階で起きたのかが見えます。商品ページに来る人が減ったのか、カートに入れた人が買わなくなったのか。
原因の場所が違えば、打ち手はまったく別物になります。上流なら訴求や集客の話、下流ならページやフォームの話です。
つまりファネル分析は、成果を測るためではなく、次に何をするかを決めるための道具なのです。
似た言葉との違いを、ざっくり整理しておく
導線とか経路分析とか、似た響きの言葉が並んで混乱しがちです。最初に整理しておきましょう。
| 用語 | 見ているもの | 向いている場面 |
|---|---|---|
| ファネル分析 | 決めた順路の各段階の到達数 | 改善する場所を決めたいとき |
| 経路分析 | 実際に通ったページの流れ | 想定外の動きを探したいとき |
| N1分析 | 特定の一人の行動履歴 | 理由の仮説を立てたいとき |
ファネルはこちらが仮説として決めた道を測るもの、経路分析は実際に通った道を後から眺めるものです。
順番としては、まずファネルで漏れている場所を特定し、それから経路やN1で理由を探るのが効率的です。いきなり全経路を眺めても、情報が多すぎて溺れます。
ステップの決め方:多くても6個まで
ファネルを作るとき、最初にやるのはステップの設計です。ここでつまずく人が本当に多い。
コツは、細かく作りすぎないことです。10段も20段もあるファネルは、作った本人でさえ読めなくなります。
最初と最後を先に決める
順番としては、まずゴールにあたる最後のステップを決めます。購入完了、申し込み完了、資料ダウンロード完了など、これが達成できたら成果だと言い切れるものです。
次に入口を決めます。サイト全体の訪問でもいいですし、特定の広告ランディングページへの到着でもかまいません。
この二つが決まったら、あとは間を2〜4段で埋めるだけです。全体で4〜6ステップに収まれば、誰が見ても読めるファネルになります。
途中に置くのは、意思が見える行動
では、間のステップに何を置くか。ここで迷いますよね。
基準はひとつです。その行動を取った人は、取らなかった人より先に進む気があると言い切れるかどうかで決めます。
カートに入れる、料金ページを見る、フォームを開く。どれも、ただ眺めているだけの人とは明らかに違う一歩です。
逆に、ページの下までスクロールしたといった受け身の行動はステップに向きません。数は稼げますが、意思がにじみ出ていないので改善の手がかりになりにくいのです。
こうした途中の小さな一歩をどう設計するかは、マイクロコンバージョンの設計|小さな一歩を計測するでさらに詳しく扱っています。
言葉だけだと分かりにくいので、実際のファネルの形を二つ挙げます。
BtoBサービスの例
1. サイト訪問
2. 料金ページ閲覧
3. 無料登録フォーム表示
4. 登録完了
5. 初回ログイン
ECサイトの例
1. サイト訪問
2. 商品ページ閲覧
3. カート追加
4. 購入手続き開始
5. 購入完了
どちらも5段。この粒度なら、翌週に数字を見返しても迷いません。
設計の最後に、ひとつだけ確認してほしいことがあります。それぞれのステップが、本当に計測できる形になっているかです。
完了ページのURLが分かれておらず、フォーム送信後も同じアドレスのまま。この状態だと、そもそも到達を数えられません。
ステップを決めた直後に、URLやボタンで区別できるかを見ておくと後で困りません。ページではなくボタンのクリックをステップに置く場合も、同じ確認が要ります。
数字の読み方:率と人数を必ず並べる
ステップが決まったら、いよいよ数字を読みます。ここが本題です。
見るのは三つだけです。各ステップの到達数、ひとつ前からの通過率、そしてその間に消えた人数を、いつも横に並べます。
架空のサービスの1か月分で考えてみましょう。次のような結果が出たとします。
| ステップ | 到達数 | 通過率 | 失った人数 |
|---|---|---|---|
| サイト訪問 | 12,000 | — | — |
| 料金ページ閲覧 | 3,600 | 30% | 8,400 |
| 登録フォーム表示 | 1,080 | 30% | 2,520 |
| 登録完了 | 540 | 50% | 540 |
| 初回ログイン | 430 | 80% | 110 |
最終的なCVRは 540 ÷ 12,000 で4.5%です。ここまでは普通のレポートでも分かります。
面白いのはここから。通過率が最も低いのは30%の二か所ですが、失った人数で見ると訪問から料金ページの8,400人が飛び抜けて多いのです。
なお、この表の人数はセッション(訪問)単位で数えています。Strideのファネルも、コンバージョンをCVステップに到達したセッションの数として扱います。
一番低い率が、必ずしも最優先ではない
では8,400人が漏れている場所を直せばいいのか。実は、そう単純でもありません。
判断の軸になるのは、改善したときに増えるコンバージョンの件数です。ざっくり見積もってみます。
改善インパクトの試算
A案:訪問 → 料金ページ を 30% → 35% に(+5pt)
3,600人 → 4,200人(+600人)
以降の通過率 30% × 50% が変わらないとすると
登録完了は 540 → 630(+90件)
B案:フォーム表示 → 登録完了 を 50% → 60% に(+10pt)
1,080 × 0.60 = 648
登録完了は 540 → 648(+108件)
母数の大きいステップを5ポイント動かすのと、母数の小さいステップを10ポイント動かすのが、ほぼ同じ効果になりました。
通過率の低さだけを見て飛びついていたら、この比較はできません。率と人数を必ず並べる理由がここにあります。
そのうえで、実務には下のステップほど改善しやすいという経験則があります。すでに料金を見てフォームまで開いた人は、もともと買う気があるからです。
ですから最初の一手は、下から数えて大きな段差があるところを選ぶのが無難です。上流の集客を増やす施策は、成果が出るまでの時間もお金もかかります。
ちなみに、通過率の適正値をよく聞かれますが、業種もサイトの目的も違うので他社の数字と比べても意味がありません。比較すべきは先月の自分たちです。
同じサイトの先月比、あるいは同じ月の流入元どうしの比較。この二つだけで、改善の判断はほぼ足ります。
つまずきやすいポイントと、その避け方
ここからは、運用を始めてから気づく落とし穴の話です。先に知っておくと、無駄な遠回りを一つ二つ減らせます。
期間とサンプル数が足りていない
昨日1日のファネルを見て、通過率が10ポイント落ちたと騒ぐ。よくある光景です。
1日のコンバージョンが10件しかないサイトなら、翌日が6件になることは偶然でも普通に起きます。目安として、最終ステップの到達が週に30件を下回るなら、日次で追うのはやめるのが賢明です。
その規模なら週次や月次でまとめて見ましょう。数字が少ないうちは、後で触れる個人単位の分析のほうがずっと役に立ちます。
比べる相手にも注意が必要です。平日と土日、月初と月末では、そもそも訪問者の質が違います。
週の途中どうしを比べるのではなく、同じ曜日の並び、つまり7日単位で比較する。これだけで、意味のない上下に振り回される回数がかなり減ります。
セッション単位か、人単位か
これは静かに結果を狂わせる論点です。1人が3回訪問して3回目に購入した場合、通過率はどう数えるべきでしょうか。
多くのツールはセッション(訪問)単位で数えます。この場合、購入しなかった2回も分母に入るので、通過率は低めに出ます。
どちらが正しいという話ではなく、社内で定義を揃えておくことが大事です。先月はセッション単位、今月は人単位では、前月比が意味を持ちません。
計測漏れを、改善余地と見間違える
ある日いきなり通過率が半分になったら、まずサイトの変更履歴を疑ってください。ボタンの構造が変わった、URLの形が変わった、といった理由で計測が外れているケースが驚くほど多いのです。
見分け方は単純で、そのステップだけが不自然に落ち、前後のステップは平常どおりなら計測を疑います。ユーザーの行動が一夜で半減することは、まずありませんから。
ステップの順番を、どこまで厳密に見るか
もうひとつ、設定画面で必ず出会う論点があります。定義した順番どおりに通った人だけを数えるのか、順不同でも数えるのか。
厳密にすると、料金ページを見ずにいきなりフォームへ飛んだ人が全員こぼれ落ちます。実際のユーザーは、こちらが引いた線のとおりには歩いてくれません。
迷ったら、まずは緩い設定で全体像をつかみ、必要になってから厳密にするのがおすすめです。最初から厳密にすると、数字が小さくなりすぎて何も読み取れなくなります。
離脱の原因を掘り下げる
漏れている場所が分かっても、原因はまだ分かりません。ここからが分析の本番です。
やり方は大きく三つあります。全体を切り分ける、一人を追う、そして実際の動きを見る。
上から順に粒度を細かくしていくイメージで、ひとつずつ説明します。
セグメントで切り分ける
まず、漏れているステップを流入元やデバイスで分けて見ます。
全体の通過率が30%でも、検索から来た人は45%、広告から来た人は12%ということがあります。こうなると、問題はページ自体ではなく、広告の訴求とページ内容のずれだという筋が見えてきます。
デバイス別も定番です。PCでは50%通過しているのにスマホが20%なら、ボタンが指で押しにくい、フォームが縦に長すぎる、といった原因が疑わしくなります。
もうひとつ効くのが、新規訪問とリピート訪問での比較です。リピートだけ通過率が高いなら、初回の人に情報が足りていない可能性が高いといえます。
セグメントを切るときのコツは、一度にひとつの軸だけで切ることです。流入元とデバイスと期間を同時に絞ると、あっという間に該当数が数十人になり、偶然と区別がつかなくなります。
前提として、流入元がそもそも正しく分類できているかも確認しておきたいところです。Gmailからの訪問が検索に混ざるような誤分類は、セグメントの結論をまるごとひっくり返します。
分類の考え方は流入元の正しい見方|検索・広告・メール・SNSを分けて計測するにまとめました。Strideは検索・広告・メール・SNS・外部サイト・直接を自動で分けて数えます。
一人の行動を最後まで追う
セグメントで方向が見えたら、次は個人です。離脱した人を一人選び、その日の行動を最初から最後まで並べて眺めます。
料金ページを3回行き来している。FAQを開いて戻ってきた。
そういう痕跡が、集計値からは絶対に出てこない仮説を運んできてくれます。数十人分を眺めるうちに、同じ引っかかり方が何度も出てくることに気づくはずです。
考え方はN1分析とは|一人の行動から改善のヒントを得るにまとめました。Strideではセッションをまたいで一人の履歴を時系列で追えるので、同じ人が3日前にも来ていたといった事実から解釈が変わることもよくあります。
さらに、その人の画面操作を動画のように再現するセッションリプレイまで見ると、フォームのどの欄で手が止まったのかが分かります。Strideのリプレイは記録の時点で全テキストを伏せ字にし、入力値も画像も一切保存しない完全マスク方式です。
録画するページを指定でき、記録は7日で自動的に消えます。個人情報を抱え込まずに、詰まっている場所だけを確認できるわけです。
もうひとつ、離脱を読むときに効くのが滞在時間です。Strideは15秒ごとのハートビートで滞在を測るので、1ページだけ見て帰った訪問でも、すぐ閉じたのか数分読んでいたのかを区別できます。
仮説を検証し、改善を運用に載せる
原因の当たりがついたら、いよいよ直します。ただし、いきなり本番を全面的に作り替えるのは避けたいところです。
変えるのは一度にひとつ
見出しもボタンも画像も同時に変えて、数字が上がったとします。何が効いたのか、分かりませんよね。
だから一度に変える要素はひとつに絞り、A/Bテストで比較します。具体的な手順や必要な期間の考え方はA/Bテストの始め方|ノーコードで検証する手順と注意点にまとめてあります。
評価するときの原則もひとつだけ。変更した場所の直後ではなく、最終ステップの到達数で判断してください。
フォーム表示は増えたのに登録完了は減っていた、という結果は本当によくあります。途中を増やすだけの改善は、成果に届かないまま終わります。
毎週、同じ順番で見る
最後に続け方の話です。ファネル分析は一度作って終わりではなく、毎週決まった手順で見るから効いてきます。
おすすめは、次の四つを同じ順番でなぞることです。慣れれば15分ほどで終わります。
- 各ステップの通過率を先週と比べる
- 大きく下がっていたら、まず計測不具合を疑う
- 問題なければ流入元とデバイスで切り分ける
- 気になるセグメントから数人を選び、行動を追う
この順番を固定するだけで、判断のブレがぐっと減ります。人が入れ替わっても同じ結論にたどり着けるようになるのも利点です。
あわせて、いつ何を変えたかのメモを残しておいてください。3か月後に数字が動いた理由を思い出せるかどうかは、この一行のメモにかかっています。
そして、直したら必ずファネルに戻って結果を確かめる。この往復が回り始めると、改善は感覚ではなく手順になります。
数字を見る時間そのものを減らしたいなら、AIに聞ける仕組みを使う手もあります。StrideはMCPに対応していて、先週と比べてどのステップが落ちたかといった質問を、Claudeなどから自然な言葉で投げられます。
参考記事
考え方を補強するために、公式の解説にも目を通しておくと理解が早くなります。