申し込みの件数だけを毎日眺めて、増えた減ったに一喜一憂している。心当たりはありませんか。
最終成果の数字はもちろん大事です。ただ、その数字だけを見ていても、明日から何を直せばいいのかまでは教えてくれません。
そこで成果の手前に置くのがマイクロコンバージョンです。この記事では、選び方の基準、実際の計測方法、数字の読み方、現場での回し方までを順番に説明します。
専門知識はいりません。必要なのは足し算と割り算だけです。
マイクロコンバージョンとは、成果の手前にある小さな一歩
購入や申し込みのような最終成果のことを、マクロコンバージョンと呼びます。対して、そこへ向かう途中の小さな行動がマイクロコンバージョンです。
料金ページを開く、資料をダウンロードする、カートに入れる。どれも売上そのものではありませんが、前に進もうとする意思がはっきり表れた行動です。
二つの違いを、性質の面から並べておきます。役割がまったく別物だと分かれば、使い分けで迷わなくなります。
| 観点 | マクロ(最終成果) | マイクロ(途中の一歩) |
|---|---|---|
| 件数 | 少ない(月に数十件) | 多い(月に数百〜数千件) |
| 役割 | 事業の成果を確かめる | 改善する場所を見つける |
| 目標にすべきか | する | しない(手段であって目的ではない) |
大事なのは三行目です。マイクロコンバージョンは道しるべであって、ゴールではありません。
なぜ最終成果だけでは改善が進まないのか
理由は二つあります。ひとつは、件数が少なすぎて変化が読めないことです。
月に30件の申し込みがあるサイトを想像してください。何か施策を打って33件になったとして、それが成果なのか、たまたまなのか。
3件の差では誰にも判断できません。判断できない数字を毎日眺めるのは、時間の使い方としてもったいない話です。
もうひとつは、原因の場所が分からないことです。申し込みが減ったとき、広告の質が落ちたのか、料金ページで引かれたのか、フォームで力尽きたのか、最終成果の数字は何も語ってくれません。
途中に計測点を置くと、この二つが同時に解決します。件数が10倍あれば差は読めるようになり、減った段が分かれば直す場所も決まります。
ファネルの中身を決める作業そのもの
やっていることは、ファネル分析の基本|離脱ポイントの見つけ方と改善の進め方で扱うファネルの中身を設計する作業と同じです。
ファネルが器だとすれば、マイクロコンバージョンはそこに入れる中身です。器だけ用意しても、置く段が的外れなら結局なにも見えません。
良いマイクロコンバージョンを見分ける三つの条件
何でも測ればいいわけではありません。増やしても最終成果に効かない行動を追いかけると、努力が丸ごと無駄になります。
選ぶときに確かめたい条件を、表にまとめました。
| 条件 | 中身 | 満たさないとどうなるか |
|---|---|---|
| 意思がある | 進む気のある人だけが取る行動 | 件数は出るが改善に効かない |
| 数が出る | 週に数十件は発生する | 差が読めず判断ができない |
| 相関がある | 通った人のCVRが明らかに高い | 増やしても売上が動かない |
三つとも満たす行動は、実はそう多くありません。だからこそ、思いつきで並べるのではなく、候補をいったん書き出してこの表に当ててみる価値があります。
意思が見える行動を選ぶ
ページを最後までスクロールした、5秒以上滞在した。こうした受け身の行動は件数こそ稼げますが、意思がにじんでいないので手がかりになりません。
判断の目安はシンプルです。その行動を取るために、訪問者が指を動かして何かを選んだかどうか。
料金ページへのリンクを押す、サイズや数量を選ぶ、フォームの最初の欄に文字を入れる。どれも、ただ眺めているだけの人とは明らかに違う一歩です。
相関は、あとから必ず確かめる
ここが一番飛ばされやすいところです。設計した時点では、その行動が成果につながるかどうかは仮説にすぎません。
確かめ方は簡単で、その行動を取った人のCVRと、取らなかった人のCVRを並べるだけです。前者が後者の3倍以上あれば、指標として使う価値は十分あります。
たとえば資料をダウンロードした500人のうち42人が申し込んだなら8.4%。ダウンロードしなかった9,500人のうち54人なら0.6%です。
14倍の差があるので、この行動は使える指標だと判断できます。逆に1.2%と1.0%のように差が誤差の範囲なら、その計測点は外してかまいません。
測る対象を減らすのも、立派な設計です。増やすより勇気がいりますが、効果はあります。
業種ごとの、置きどころの例
抽象的な話が続いたので、具体例を挙げます。自分のサイトに近いものを土台にすると早いです。
BtoBのサービスサイトなら、料金ページ閲覧、導入事例の閲覧、資料ダウンロード、フォーム開始のあたりが定番になります。
ECなら、商品詳細の閲覧、カート追加、レジ画面への到達。メディア中心のサイトなら、関連記事への回遊、メール登録欄の表示、登録ボタンのクリックです。
業種で違うのは、判断にかかる時間の長さです。ECは同じ日のうちに決まりますが、BtoBは数週間かけて何度も戻ってきます。
ですから、BtoBのマイクロコンバージョンはセッションをまたいで数えられるかが地味に効いてきます。初回訪問で資料を落とし、三週間後に問い合わせる人を別人として数えていては、相関の検証ができません。
数は欲張らないでください。4〜6個に収めると、人が読める形のファネルになります。
実装は、ページとクリックの二種類だけ
計測の中身は、突き詰めると二種類しかありません。ページが開かれたことと、何かがクリックされたことです。
ページ閲覧は、計測タグを入れていればそのまま記録されます。料金ページ閲覧のようなマイクロコンバージョンは、URLを指定するだけで設定が終わります。
問題はクリックのほうです。同じページの中で起きるので、URLだけでは区別できません。
属性をひとつ足すだけで、名前が固定できる
Strideの計測タグは、押されたボタンやリンクを自動で拾い、その表示テキストを名前として記録します。ノーコードで始められるのはこの仕組みのおかげです。
ただし、ボタンの文言を変えると名前も変わってしまいます。長く追いたい行動には、変わらない名前を明示しておくのが安全です。
<!-- 表示テキストを変えても、名前は download_whitepaper のまま -->
<a href="/docs/whitepaper.pdf" data-cv="download_whitepaper">
資料をダウンロード(無料)
</a>
<!-- カート追加ボタン -->
<button data-cv="add_to_cart">カートに入れる</button>
属性を書けない場所、たとえば動画を最後まで見たといったタイミングで記録したい場合は、JavaScriptから直接送る手もあります。
// 動画を最後まで再生したら記録する
video.addEventListener('ended', function () {
window.stride.track('video_complete');
});
名前は英数字とアンダースコアで統一しておくと、後から見返したときに読みやすくなります。日本語も使えますが、チーム内で書き方を揃えるほうが先です。
実装で気をつける、二つの細かい点
実装そのものは数分で終わりますが、あとから困りやすい点が二つあります。先に共有しておきます。
ひとつは、同じ意味の行動が複数の場所にあるケースです。ヘッダーとページ末尾に同じ資料ダウンロードのボタンがあるなら、両方に同じ名前を付けるのが基本です。
場所ごとの差を見たいときだけ、download_header と download_footer のように分けます。最初から分けすぎると、集計のたびに足し算する羽目になります。
もうひとつは、確認の手順です。タグを入れたら、自分でそのボタンを一度押し、管理画面にその名前が出てくるかを必ず見てください。
計測できていない状態で一週間ためてしまうのは、よくある悲しい事故です。
入れた日に一度だけ確認する。これだけで防げます。
数字の読み方は、段ごとの通過率
計測点が並んだら、次は読み方です。ここを間違えると、せっかく上げた解像度が活きません。
見るべきは全体のCVRではなく、隣り合う段の通過率です。数字で追ってみましょう。
ある月の実績が、訪問10,000、料金ページ閲覧1,200、フォーム開始240、申し込み完了96だったとします。全体のCVRは0.96%です。
段ごとに割ると、訪問から料金ページが12%、料金ページからフォーム開始が20%、フォーム開始から完了が40%になります。三つを並べた瞬間、目立つ段が浮かび上がります。
一般に、フォームを開いた人の完了率が40%というのはかなり低い部類です。ここを50%に上げるだけで、申し込みは96件から120件へ、およそ25%増になります。
入力欄の数や必須項目の見直しなど、フォームそのものの直し方はフォーム最適化(EFO)|入力離脱を減らす7つの工夫にまとめました。
一方、訪問から料金ページへの12%を13%に改善しても、最終成果は8件しか増えません。どちらに時間を使うべきか、数字がはっきり答えてくれます。
全体のCVRだけでは、この判断ができない
同じサイトで全体CVRだけを見ていると、手元にあるのは0.96%という一つの数字だけです。上げたいのは分かるが、どこを触るかは勘に頼ることになります。
打ち手そのものの引き出しはコンバージョン率(CVR)を上げる7つの視点にまとめていますが、順序としては、打ち手を選ぶ前に直す場所を決めるのが先です。
切り口を変えると、直す対象がもっと絞れる
段ごとの通過率が出たら、もう一段だけ細かく見る余地があります。同じ段でも、流入元やデバイスによって数字がまるで違うことが多いからです。
たとえばフォーム開始から完了への通過率が、パソコンでは55%なのにスマートフォンでは28%だったとします。この場合に見直すべきなのは文言ではなく、小さな画面での入力のしやすさです。
流入元でも同じことが起きます。検索から来た人は料金ページまで届くのに、広告から来た人はその手前で帰ってしまう、という差は珍しくありません。
Strideは流入元を検索・広告・メール・SNS・外部サイト・直接に自動で分類し、デバイス別や国別の内訳も同じ画面で確認できます。切り口を変えて同じ通過率を眺めるだけで、直す対象は一段と具体的になります。
ただし、分けすぎると各グループの件数が減って差が読めなくなります。最初は流入元とデバイスの二つに絞れば十分です。
検証のスピードが上がる、もうひとつの効果
マイクロコンバージョンには、離脱の場所を見つける以外の使いみちがあります。A/Bテストの判定を早められることです。
最終成果が月30件のサイトでA/Bテストをすると、差が出たと言えるまでに数か月かかります。現実には、そこまで待てません。
同じサイトでフォーム開始が月240件あるなら、必要な期間はぐっと短くなります。件数が多い指標ほど、少ない日数で傾向がつかめるからです。
ただし落とし穴もあります。フォーム開始が増えても、申し込みが増えていなければ意味がありません。
実際、ボタンの文言を煽り気味に変えると、クリックは増えるのに完了は減ることがあります。期待して押した人が、中身を見て帰ってしまうからです。
この現象は、マイクロだけを見ていると改善したように見えてしまうのが厄介なところです。必ずマクロの数字を横に並べて確認してください。
整理すると、判定はマイクロで早めに、確認はマクロで最後にという二段構えです。この進め方はA/Bテストの始め方|ノーコードで検証する手順と注意点でも前提にしている考え方なので、あわせて読むと理解が早いはずです。
現場で回すための、30日の進め方
ここからは実務の話です。設計から改善までを、一か月で一周できる形に落とします。
よくあるつまずきを先に知っておく
順番を説明する前に、相談を受けやすい失敗を挙げておきます。どれも設計の段階で防げるものです。
まず、計測点を増やしすぎること。15個も20個も置くと、どれが重要か分からなくなり、結局どれも見なくなります。
次に、マイクロを最終目標にしてしまうこと。資料ダウンロード数を目標に置いた結果、中身の薄い資料を大量に配って商談は一件も増えなかった、という事故は珍しくありません。
三つめは、リニューアルで指標が途切れることです。ボタン文言を変えた瞬間に名前が変わり、前後の比較ができなくなります。
これは先ほどのdata-cvで名前を固定しておけば防げます。長く追いたい行動ほど、最初に手を打っておく価値があります。
最後に、数字だけで理由を推測してしまうこと。落ちている段が分かったら、そこで離脱した訪問者ひとりの動きを実際に追うと、想像もしなかった事情が見つかることがあります。
Strideなら、段ごとの到達数を確認したあと、その段で止まった人の行動履歴をセッションをまたいで時系列でたどれます。数字で場所を決め、一人の動きで理由を探すという順番が、そのまま画面の中でつながります。
操作の流れそのものを動画のように再現するセッションリプレイもあり、どこで手が止まったのかを目で追えます。記録は全テキストを伏せ字にした状態で行われ、入力値や画像は一切残らないので、個人情報を預かる心配もありません。
一か月の手順
つまずきを頭に入れたうえで、実際の進め方です。急がず、この順番どおりに進めてください。
- 最終成果を一つだけ決める(申し込み完了、購入完了など)
- 手前の候補を10個書き出し、意思・件数・相関の条件で4〜6個に絞る
- ページはURLで、クリックはdata-cvで計測を入れる
- 一週間ためて、段ごとの通過率を並べた表を作る
- 一番落ちている段だけを直す
- 二週間後に同じ表を作り、その段の通過率が動いたかを見る
一番大事なのは5番です。落ちている段が二つ三つ見つかっても、同時に触らないでください。
同時に直すと、どちらが効いたのか永久に分からなくなります。急がば回れ、です。
4番の一週間という期間にも意味があります。曜日によって訪問者の動きは大きく変わるので、7日を丸ごと含めると平日と休日の偏りが打ち消されます。
3日だけ見て判断すると、たまたま平日が多かっただけの数字に振り回されます。逆に一か月待つと、改善の周期が遅くなりすぎます。
まとめ
マイクロコンバージョンは、最終成果の手前に置く計測できる小さな一歩です。意思があり、件数が出て、成果と相関する行動を4〜6個だけ選びます。
読み方は段ごとの通過率。一番落ちている段を一つだけ直し、二週間後に同じ表で確かめる。
これを繰り返すと、改善は勘の勝負から手順の話に変わります。まずは自分のサイトで、成果のひとつ手前にある行動を書き出すところから始めてみてください。